芯材選びの重要性

itten

2018年01月26日 15:06

みなさん、こんにちは。

sassiです。





総手縫いで革製品を制作しているクリエイターを全体で見ると、
やはりヌメ系の素材がメインで、良くも悪くも『手づくり感』の強い作風が多いのが現実。

それ自体は別に悪い事ではありませんが、
それが理由で、制作できるアイテムが限られてしまったり、
作風がどれも同じような感じになってしまうのは、かなりの問題があると思います。

例えばバッグなどを制作する場合、手縫いの作風ではインナーを付けない事が多いです。
この場合、インナーを付けないという事は芯材が使えない(裏側に芯材が見えてしまうから)。
という事は、革素材そのものの硬さや厚さ、重さがそのまま作品の仕上がりになってしまいます。
それでは、作れるものも限られてしまいますし、
どちらかというと少しハード目の作風に寄ってしまいますね。

だから、インナーを付ける事をベースに考え、その上で適した芯材選びをします。

しかし、この芯材選びが難しい。
硬さや重さ、質感やボリューム感、そしてしなり具合など。

例えば、本体のメインのなる胴パーツ(バッグ本体の前後の大きなパーツ)が大きく、
マチがある程度の硬さがある場合などは、どうしても胴パーツが内側に反ってしまいがち。
これを防ぐ為にも芯材を使用しますが、パーツが大きければ大きいほど、
全面に芯材をベタ貼りしても反ってしまいますね。
逆に、全面にベタ貼りをして反らないくらいの芯材が必要と考えると、
相当な厚みが必要で、そうなると重さもかなりで、バッグ自体も硬くなりすぎて質感が台無し。

下の例は、ヌメ革を芯材を貼る事を前提に薄くし、
全面に芯材をベタ貼りしてある状態。
そのパーツを仮でマチパーツにクリップで撮影用に固定しました。
(今回のバッグは、外周を革で覆ってしまう為、クリップで仮に挟んでも問題ありません)







これでも芯材が貼ってあるんですよ。
相当内側に反ってしまっているのが分かります。
片側でこれだけ反っていたら、反対を同じ様に取り付ければおそらくくっ付きますね。

しかも今回は、バッグの口元にファスナーを取り付ける為、
バッグの口元が反っている状態では、ファスナーを取り付ける事ができないのです。


では、この問題をどう解決するか・・・


全面に反らなくなるくらいの硬く厚い芯材を貼るか?
これは現実的ではありません。
芯材の素材によっても異なりますが、相当厚い芯材を貼ったとしても反ります。
また、重くなりすぎすし硬くなりすぎる・・・

では、口元に部分的に芯材を貼るか?
だとしたら、素材は何か?

問題は素材。
厚紙系やプラ系など、そんなに厚いものでもこれだけの反りであれば直らないでしょう。
更に、部分的に貼るので、その部分の段差が内側に出てしまう。
スウェードをベタ貼りしなくても、触れば直ぐに分かるほどの段差です。

それでは金属の芯材はどうか・・・

気になるのは厚さと重さ。
そして万が一曲がってしまった時に、元に戻るかという問題。
裏側の段差ができない程度の厚みでは、普通の金属であっても大して強度はありません。
まっすぐにもならないし、簡単に曲がってしまう。

そこで使用するのが、『鋼(ハガネ)』です。

ハガネは曲げても元に戻るという復元力が強く、丈夫。
更に素材自体がとても薄いので、裏面に段差ができない。
多少出てしまう段差も、ハガネが取れてしまう事の防止も含めて処理します。
そして軽いので、バッグ全体の重量にも影響が出ない点も強みです。







上がハガネ入りで、下がハガネなし。
口元にたった数cm巾のハガネを入れるだけで、あれだけ反っていた本体の胴側が、
これだけまっすぐになります。
口元がまっすぐになれば、ハガネを貼っていない下の方も自然と平らになります。
本体は軽いまま。

やはり、まっすぐでなければいけない部分は、何からの手段でそうしなければいけません。
反ったままの状態で制作してしまうのは、個人的には問題ありと考えます。
それがOKな作風もあるかもしれませんが、条件的に口元にファスナーが付いたり、
金具が付いたりする場合には、好みや作風は関係なく、どうにかしなければいけないのです。

今回はひとつの手段に過ぎませんが、インナーや芯材にしっかり向き合えば、
制作できるアイテムや作風の幅が劇的に広がります。




それでは・・・




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