浜松発信の総手縫いのレザーブランド、leather works ittenの革職人のブログ。物づくりを通して日々感じたことなどをつぶやきます。

『コバレベル』

みなさん、こんにちは。




生徒さんからもリクエストが多く、教室では繰り返し説明をしている
『コバ処理』についてのお話。

7月にもコバについての記事を書き、
『コバ処理を回数で意識するのは良くない』という説明をしましたね。
極論で言うと、質の悪い10回(10セット)は質の良い1回にも満たない!

何も考えずに、回数を重ねるだけのコバ処理は無意味。
では、コバ処理を考えた時に基準となる『ものさし』をどう設けたらいいのか・・・
そんな説明を生徒さんにする時に、私なりに分かりやすく伝えるのが、
『コバ処理を段階的に捉える』という考え方です。

コバ処理に大事なのは、『現段階を的確に把握する事!!!』
そして、それに応じた的確な作業をする事です。

“コバレベル”というのは、あくまでもイメージです。
例えば、コバ処理を開始する段階から、完成までを10段階に分けたとしましょう。
そして、この10段階のレベルを下記のように区別します。

【レベル1~5】
この段階はコバ面の凹凸やザラザラ感がひどく、いわゆる“粗研ぎ”の段階。
しっかりとペーパー掛けなどを行い、ハードに磨きます(研ぎます)。

【レベル6~8】
凹凸や激しいザラザラ感がなくなり、さわり心地はある程度滑らか。
しかし、見た目には細かな凹凸があり、まだまだ美しくない下地状態。
ペーパー掛けはするが、強く掛け過ぎるとザラザラが悪化してしまうので、
ペーパー掛けは指の腹などを使用し、ソフトにサラッと掛ける程度。

【レベル9】
凹凸もなくなり、見た目もある程度綺麗な状態。
処理剤の塗りムラや艶感をコントロールしながら、塗って磨いての繰り返し。
ペーパーは使用しない。

【レベル10】
仕上げ。
磨きには硬いものを使用せず、処理剤を非常に薄く塗り、
キャンパス地や布生地等で磨きあげる。


『コバレベル』


自分の中で、このようにコバ処理をレベル分けします。
そして今まさにコバ処理をしている段階が、どのレベルにあるのかを的確に把握する事が大事です。

レベル1~5の場合、しっかりペーパー掛けをしますので、ある程度の処理剤も必要になります。
処理剤が落ち切っている状態で、更にペーパー掛けをしてもボロボロになる一方。
従って、レベルが上がっていくにつれ、処理剤の塗る量も減らしていくという認識です。

生徒さんに良くあるパターンが、今いるレベルと処理剤の塗る量のバランスが取れいない事。
コバがうまく仕上がらない理由で、最も多いパターンです。

例えば、現時点ではレベル3くらいなのに、レベル8くらいの処理剤の塗り方や磨き方をしている。
これでは何度繰り返しても良くはなりません。
そして、このパターンには2種類あり、

1、ご本人はレベル8だと思っており、レベル8の作業をしている。
2、レベル3だとは分かっているが、無意識のうちにレベル8の作業をしている。

大体このどちらかです。
コバ処理を回数で意識している人は前者の陥りやすく、意識的なズレ。
後者は意識的なズレではなく、テクニカル的なズレ。

どちらも現状と認識のズレがあり、コバが綺麗に仕上がりません。
各レベルにはそれに適した塗り方、磨き方、研ぎ方があります。

あくまでも感覚的なイメージですが、このような『ものさし』を持っているか持っていないかは
非常に大きな差になります。
この基準があると、例えば1枚の革で断面も綺麗な段階からコバ処理をスタートしたとすると、
レベル7くらいからのスタートとなりますので、レベル7~10だけをやればいいだけです。
しかし、この基準がないとこの場合でもレベル1からの感覚でスタートしてしまい、
無駄時間と手間、そして美しくないコバ面に仕上がってしまいます。


う~ん、文章にするととても複雑でうんざりしてしまいますかね。
言葉と実演で生徒さんに説明すると、比較的理解はしやすいと思いますが・・・
勿論、使用する処理剤の特徴や、コバ面の仕上げ方によって異なります。
そして、基本的に私は、仕上がりが綺麗で効率的、
長期的にその状態が保たれる手法であれば、手段は問わないという考え方なので、
今回の内容も、手法・考え方のひとつに過ぎません。



それでは・・・




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